免疫

LPSのインフルエンザウイルス等に対する有効性


新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数は、世界で3150万人、回復者数2160万人、死亡者数96.7万人、日本で7.9万人、回復者数7.1万人、死亡者数1500人(2020年9月23日時点)。

世界中で拡大している中、現行医薬品で代替できるものはないかスクリーニングされたところ、アビガンが期待されて再検証されていましたが、結果、その有効性は確認されませんでした(7月10日時点)。

ワクチンの開発が急がれており、必ずまた感染拡大することがわかっている冬に向けて、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、治験のフェーズ3の終了を待たずにワクチンを承認する可能性を示唆していますが、安全性が危惧されます。事実、イギリスのオックスフォード大学では被験者に重篤な副作用が確認され、開発が中断しました(9月8日)(→9月12日に再開)。通常のワクチン開発でも、確実な安全性が確認されて発売されるのに、最低2~3年は必要と言われています。

また、将来、ワクチンを接種できたとしても、ウイルスは変異していきますので、インフルエンザワクチン同様、100%感染予防を保証するものではありません。

つまり、ワクチンを摂取し、国内が安定したとしても、外国からの入国を一定期間の隔離経過観察なしに解除すると、様々なウイルスの型が容易に国内で拡大しやすくなり、高齢者、基礎疾患をお持ちの方、免疫力が落ちている方が重症化するリスクが高まり、併せて医療崩壊につながるリスクは消えないということです。

ではどのようにして感染リスクを減らしていくかですが、以下が挙げられます。これは将来にわたって今と変わらない予防対策です。

  • 自身が感染していると思い、飛沫を飛ばさないよう常にマスクを着用する。
  • 帰宅後のうがい、手洗いを徹底する。
  • できるだけ手指を消毒する。
  • 洗っていない手、消毒していない手で顔を触らない。
  • 生活習慣(規則正しい生活、食事内容、適度な運動、十分な睡眠)を正す。
  • 基礎疾患等、罹患している方は治療に専念する。
  • 常に免疫力が高い状態を維持する。

実は、最後の「常に免疫力が高い状態を維持する」というのは、「手指を消毒する」ことと矛盾することでもあります。

私たちの身体に備わっている免疫は、体外からの異物を取り込むことで強くなっていきます。つまり、菌やウイルスなどの異物が少ないといった衛生環境が良いほど、自身の免疫力を下げたり、乱したりすることにつながります。

このような免疫力低下、免疫不全は、ガンはもちろん様々な疾病、花粉やアトピーなどのアレルギー、骨粗鬆症、リウマチ、歯周病、糖尿病、認知症、女性特有の症状による不妊症などの発症につながることは今や自明の事実となっています。

ではどのようにしてその矛盾を解消するかについてです。

それは、免疫力を担う最前線で活躍するマクロファージを常にすぐ活性化できる状態にしておくことが、自然免疫を活性化させる一番重要なポイントとなります。

その最も効率的に免疫力を活性化できる状態にしておける成分が「LPS(リポポリサッカライド)」です。

LPSのインフルエンザウイルス感染予防の有効性や、新型コロナウイルス感染予防の可能性についての情報を以下に記します。


抗インフルエンザ作用1

東北大学医学部の報告では、マウスにH5N1型インフルエンザウイルスを感染させる3日前に、LPS(1.25mg/kg)を鼻腔内に投与すると著しい生存効果が得られることが示されています。

7日前の投与でも弱まりますが、効果が見られています。

メカニズムとしては、LPSがTLR4受容体を介してTRIFにシグナルを伝達し、Ⅰ型インターフェロンが誘導され、抗ウイルス作用を示すとしています。(※1)

LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之
(※1)E. coli LPS(1.25mg/kg)を鼻腔内投与12h, 24h, 3d, 7d 後にインフルエンザウイルス(PR8)を投与し、14 日間生存を観察した。LPS 投与7 日後でも感染予防効果が見られた。


抗インフルエンザ作用2

LPS が直接インフルエンザウイルスと結合すると、ウイルス粒子を不安定化させ、感染力が低下するという報告があります。(※2)

論文にはグラム陰性菌にもその効果があり、バクテロイデス型よりもパントエア菌型に属するグラム陰性菌のLPSの効果が高いことが示されています。

この報告から、LPSを鼻腔内に塗ることで物理的にウイルスを排除する方法もウイルス感染予防に有効な方法になるのではないかと考えられます。

LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之
(※2)E. coli LPS(1mg/ml)とインフルエンザウイルスを1 時間各温度で培養すると、25℃以上でウイルスを不活性化した。


ワクチンとの併用によるインフルエンザ感染予防の相乗効果1

日東電工と大阪大学のグループの報告では、パントエア菌のLPSとインフルエンザウイルスワクチンをマウスの舌下に投与することでの鼻腔粘膜のIgA抗体価を高めるアジュバント効果が見出されています。

アジュバント効果はLPSが効率的に樹状細胞などの抗原提示細胞に情報を送ったことを示しています。

さらに、マウスでのインフルエンザ感染実験によりLPSとインフルエンザワクチンの舌下投与で感染予防効果が高いことも確認されていますので、LPSによる抗ウイルス作用もあったのではないかと思われます。(※3)

以上のことから、LPSの粘膜投与(口や鼻への投与)はウイルス粒子に直接的に結合して不活性化する働き、免疫細胞に結合してⅠ型インターフェロンを誘導してウイルスを排除するはたらき、抗原提示細胞を活性化して抗体(特に粘膜のIgA抗体)の誘導を増強することでウイルス侵入から守る働きが期待できます。

LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之


ワクチンとの併用によるインフルエンザ感染予防の相乗効果2

インフルエンザワクチンによる効果的な感染予防に、LPSの経口摂取が有効であることが報告されています(※4)。

ワクチンとは、一度病原菌に晒されるとその病原菌に対する抗体が体の中につくられて、2度目に感染した時には症状が出ないか軽くてすむ、という獲得免疫の原理を応用した予防法です。

従って、インフルエンザワクチンとしては、インフルエンザウイルスの一部とか、殺したインフルエンザウイルスが投与されます。

ところがこの時、インフルエンザウイルス成分の投与だけでは抗体は効果的に誘導されず、助け(アジュバンドと言います)が必要です。

LPSは、この助けとして効果的です。

動物実験では、LPSをアジュバンドとしてワクチン投与した場合、抗体産生が有意に高まるので、将来的には注射ではなく、舌下ワクチンの開発も夢ではないことが示されています。

自然免疫応用技研株式会社HP
(※4)ワクチンとの併用によるインフルエンザ感染予防の相乗効果


新型コロナウイルス感染予防効果の可能性


新型コロナウイルスに対する潜伏期間が長い理由についての詳細は、今後の研究を待たなくてはなりませんが、自然免疫とウイルスとの攻防が重要な要因になっていると考えています。

ウイルスが気道に侵入し、上皮細胞に入り込む感染初期の段階まだ症状が現れていない状態でウイルスが排除されれば、発症せずに治癒します。

マクロファージは自然免疫(自然治癒力の中心的な細胞として、獲得免疫(抗体やキラーT細胞など)が成立していない初見のウイルス に対しても、これを異物として識別して排除しています。

しかし、マクロファージが弱っていると排除されるよりもウイルスの増加が優勢になり、感染細胞が増加し、諸症状が現れて、発症段階に至ります

コロナウイルスのひとつであるMERSはスパイク(ウイルス表面に存在する糖タンパク質)を使ってマクロファージのDPP4受容体に結合します。

すると、マクロファージの免疫機能を低下させることが報告されています(※5)。

通常ならマクロファージによりウイルスが排除されますが、MERSにはマクロファージの機能を低下させることで自然免疫を回避する能力があるようです。

もし、マクロファージの機能が低下していると、容易にウイルス侵入が成立してしまうため、マクロファージの機能を低下させない工夫が必要であると思われます。

LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之
(※5)MERS感染によるマクロファージ機能抑制作用 マクロファージ細胞株のTHP-1に MERS由来の スパイクタンパク質を添加すると、 TNFα産生能が低下する(mock:スパイクタンパク質無し、S(D510A):変異スパイクタンパク質、 wt S:通常のスパイクタンパク質)


新型コロナウイルスは一度治癒してPCR検査でウイルスが検出されないレベルに低下しても、ウイルスが再び増加することから、抗体やキラーT細胞ができにくい場合がある可能性があります 。

獲得免疫への情報伝達をする樹状細胞(DC)はヒトコロナウイルス229E (HCoV-229E)に感受性が高く感染しやす いことが報告されています (※6)。

DCはT細胞に抗原情報を伝達しますので、DCがウイルスの標的にされて排除されると、獲得免疫の成立が阻害されるかもしれません。

獲得免疫が成立しにくいとなると、 自然免疫を担うマクロファージを持続的に活性化することが重要になると考えています。

LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之
(※6)コロ ナウイルス (HCoV-229E)は樹状細胞 (DC)を障害 するが、単球(Monocytes)は障害しない B:コロナウイルスと細胞の比を 0.05にして感染させ時間経過で細胞死を評価。 C:ウイルス増加量を評価。


マクロファージの活性維持がコロナウイルス感染症の予防に重要なことは次の報告からも伺えます。

厚生労働省HP新型コロナウイルスに関するQ&Aにありますように、新型コロナウイルスの重症化リスクの高い方として、高齢者・基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患( COPD 等)、透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方が示されています。

これらの疾患にはマクロファージの機能低下が関与することが報告されています(Clin Infect Dis, 2001, Vol 33: p2040-2048)。

すなわち、高齢者や基礎疾患を持たれている方で、マクロファージの機能が低下している方は感染リクスが高いと推定できます。

LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之



※引用:LPS 粘膜摂取による新型コロナウイルス予防効果の可能性について (2020.2.27) 自然免疫制御技術研究組合 研究本部長 稲川裕之

※引用:自然免疫応用技研株式会社HP

※1 出典:J Virology, 2011, http://dx.doi.org/10.1128/JVI.06168-11

※2 出典:mSphere, 2017, https://doi.org/10.1128/mSphere.00267-17.

※3 出典:PLoS ONE 2015, 10(5): 10.1371 / journal.pone.0126849

※4 出典:A Lipopolysaccharide from Pantoea Agglomerans Is a Promising Adjuvant for Sublingual Vaccines to Induce Systemic and Mucosal Immune Responses in Mice via TLR4 Pathway, PLoS ONE 10(5) e0126849.(2015)

※5 出典:Oncotarget, 2017, Vol. 8: p9053-066

※6 出典:J Virol, 2012, Vol. 86: p7577–7587

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