免疫, 慢性炎症, 成分

LPSの皮膚塗布の有効性


LPSは、親油性の脂質部分と、親水性の糖質部分からなる両親媒性の物質で、皮膚に塗布すると脂質部分が角質中の皮脂になじみ、糖質部分が水分を保持し、穏やかな保湿作用を持ちます。

表皮にはランゲルハンス細胞というマクロファージ類縁細胞が存在し、熱、紫外線、物理的損傷で傷ついた皮膚細胞や老廃物を貪食除去し、線維芽細胞の増殖を促進します。LPSは、角質層まで樹状突起を伸ばしているランゲルハンス細胞に作用し、活性化することで、新陳代謝や自然治癒力を高めます。

また、アレルギー疾患の一つのアトピー性皮膚炎の場合は、免疫系がTh2系に偏っていると考えられています。マクロファージは主にTh1系を促進するサイトカインを分泌するため、LPSがマクロファージを適度に活性化すると、Th1系のサイトカインが産生され、Th2系に傾いていた免疫系が正常化し、アトピーが緩和すると考えられています。

このように、LPSの皮膚への効果としては、老廃物の除去細胞増殖の促進傷ついた組織の修復肌免疫バランスの改善が期待されます。


線維芽細胞制の増殖促進


ヒト線維芽細胞に直接LPSを加えても増殖は促進されません。しかし、LPSをヒトマクロファージ細胞に加え、そのマクロファージから分泌された物質を線維芽細胞に加えることで、増殖速度が顕著に高まることが確認されました。


FGF2遺伝子発現誘導


ヒトマクロファージ細胞培養液にLPSを加え、遺伝子発現量を調べたところ、線維芽細胞増殖因子FGF2、FGF5、FGF7、FGF22のうち、FGF2の発現量が10倍になることが確認されました。

FGF (Fibroblast Growth Factors(繊維芽細胞成長因子))-2は、細胞増殖、神経分化、再生を誘導するので、血管新生、創傷治癒、胚発生に関係する成長因子の一種として 知られています。


ターンオーバー促進


20~50代男女にブラインドで、アミノ酸に結合する蛍光物質を塗布した絆創膏を両腕内側に貼り付けて染色し、一方は市販の化粧水、もう片方はLPSを配合した市販の化粧水で、毎朝パッティングしてもらい、蛍光物質が消失するまでの速さを比べたところ、LPS配合化粧水でパッティングした方が早く蛍光物質が消失しました。


火傷の創傷治癒


両手を同程度火傷した患者の片手にプラセボクリーム、もう一方の手にはLPSを配合したクリームを塗布し、経過観察した結果、LPS配合クリームの方が早くよくなったため、LPSに創傷治癒効果があることが示唆されました。


アトピー性皮膚炎改善


アトピー性皮膚炎の患者に、プラセボとLPS配合の化粧クリームの塗布を二重盲検試験で行い、アトピー疾患部の肌きめを観察した結果、肌荒れ改善が確認されました。(※)



注:記載の「LPS」は全て「パントエア菌のLPS」を指します。

参考:自然免疫応用技研株式会社技術資料

※出典:平成20年度 財団法人中小企業ベンチャー振興基金:試作品研究開発助成交付「新規有用糖脂質素材「小麦発酵抽出物」を配合したスキンケア製品の開発」