免疫

自然免疫の重要性


コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、改めて「免疫」の重要性が認識されています。

開発されるであろうワクチンに期待が高まっていますが、変異していくウイルスを前に、そのワクチンが永久に効くとは限りません。

当然、インフルエンザウイルスと同様、効かない型も出てきます。そのため、常に自然免疫力を高めておくことが重要と言われています。


「自然免疫力を高めておくことが重要」なのはなぜか?


私たちの身体は常に2つの環境にされされています。1つは内的環境、もう1つは外的環境です。

内的環境=代謝は、生物として生きていく上で必要なことで太古より受け継がれてきた遺伝子に組み込まれた無意識の世界で、合成と分化を繰り返して私たちは産まれ、成長し、衰え、生きて死んでいきます。

外的環境=体外の環境は、自分より外の空気、土、何かしらの異物と接したり、代謝をするために体外から体内に食べ物を摂ったりすることで、生きていく上で必ず接しなければならないものです。

これら2つの環境に、私たちの身体は常にミクロの驚異にさらされています。

前者からは、合成と分化をする過程で、身体に不要なゴミが出てきます。例えば、使わなくなったコレステロールや中性脂肪、死んだ細胞などです。また、遺伝子のコピーミスによるがん細胞も不要な異物です。

後者からは、侵入してきた病原菌などです。

いずれも病気になったり衰え死んでしまう原因となるものです。私たち生物は、これらを排除する機能を有する必要がありました。

その機能が「免疫」です。

免疫」は全ての生物に備わっているもので、生物の身体の機能を保つために様々な役割を担っているのですが、その代表的な役割の一つである外的環境に向けた作用において、ウイルスや細菌などから身体を守る防疫機能です。

免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。

前者は先天性のもので、病原菌が体内に侵入した際に攻撃する第一防御システムです。

後者は後天性のもので、自然免疫によって得られた外敵(抗原)の情報を基に作られる抗体によって防御する第二防御システムです。

生物個体が初めて出会う外敵の場合、それに対する獲得免疫は持っていません。(ワクチンとは、ここに作用して獲得免疫を作り出すように仕向けるものです。)

つまり、今回のような新型ウイルスといった未知の外敵に対して個々の身体を守るには、病原菌を見つけたらすぐに排除する力を発揮できるよう、個々で第一防御システムを常に正常な臨戦態勢状態にしておく=自然免疫力を高めておくことが重要になるのです。


自然免疫とは


自然免疫とは、上記1.では、病原菌が体内に侵入した際に攻撃する第一防御システムと、体内の不要になったゴミの除去をする機能をご紹介しましたが、その他にも、代謝の制御を行う機能も有しています。

自然免疫と繰り返し出していますが、そもそも自然免疫を担っている存在は何か?ですが、太古から受け継がれて全ての生物に存在し、自然免疫の中心的な役割を果たしているのがアメーバ状の細胞「マクロファージ」です。

自然免疫が正常に働いている=マクロファージが常に臨戦態勢状態にある」ことを意味します。


マクロファージとは


マクロファージ」は、骨、血液、皮膚、臓器、脳・・・私たちの身体全身の至る所に存在しています。

マクロファージは必ずしもマクロファージと呼ばれるわけではなく、脳ではマイクログリア、肝臓ではクッパー細胞と呼ばれ、腸管や肺にもたくさんの粘膜マクロファージが存在し、皮膚内にも存在します。

このようにマクロファージは体内だけでなく外部環境と接する粘膜組織にも広く分布し、外部環境の変化を最も早く認識する細胞です。

局所のマクロファージで受け取られた外部情報は、サイトカインやそのレセプター分子を通じて隣接したり、離れたところにある組織マクロファージへ次々と伝達されるので、組織マクロファージは身体中に情報ネットワークを形成していると考えられます。

つまり、マクロファージを活性化する物質を経口摂取による粘膜吸収することにより、また皮膚に塗布する経皮伝達により、 体内外の健康上のトラブルの予防、回復、恒常性維持を図ることができると考えられます。


マクロファージの機能


マクロファージの特徴的な機能として第一に上げられるのが「貪食(どんしょく)」です。

読んで字のごとくマクロファージは貪り(むさぼり)食べる細胞です。

マクロファージが食べるのは、体の中の老廃物(いらなくなったコレステロールや中性脂肪など)や、自分自身の死んだ細胞、侵入してきた病原菌、1日5,000個もできると言われるがん細胞など、いずれも健康を脅かす元になるものです。

その他にも、身体の内側や外側の傷を治したり、神経の修復をしたり、体内の免疫機能のコントロールを司ったりと、健康を維持する上で極めて重要な役割を担っています。

風邪やインフルエンザなどの感染症を防いでくれるのもマクロファージ、アルツハイマー病の原因とされているアミロイドβの除去を行うのもマクロファージ、腎臓結石を除去してくれるのもマクロファージ、骨粗鬆症の原因とされる骨の代謝をコントロールしているのもマクロファージ、などなど・・・感染防御、廃物処理、創傷治癒、代謝調節、書き始めればきりがないほど、マクロファージは働いてくれています。

つまり、マクロファージが正常に機能しているかどうかで、私達の健康状態は大きく左右されると言っても過言ではないのです。


マクロファージの弱点


マクロファージはとても心強い免疫細胞の印象ですが、弱点が2つあります。

それは「ストレス」と「加齢」です。

マクロファージは異物を見つけると触手を伸ばしてすぐ貪食するのですが、ストレスがかかっていると、萎縮し、側に異物があっても触手を伸ばして貪食しようとしなくなります。またそれは加齢にも比例し、年を重ねた方ほど弱くなっていきます。

マクロファージにより体内の異物の掃除がなされない状況が続くと、感染症や身体の不調から疾病リスクへとさらされていくことになるのです。

そのため、異物を確認したらすぐマクロファージが貪食してくれるよう、マクロファージを臨戦態勢状態に維持しておくことが重要です。


マクロファージを臨戦態勢状態に維持するには


マクロファージの細胞表面にはTLR(トールライクレセプター)というキャッチミットのようなものが多種類存在します。どの種類のレセプターに結合して、信号をマクロファージに送るかで、マクロファージの機能に影響します。

マクロファージを常に臨戦態勢状態に維持することができる有効成分を3つご紹介します。

酵母やきのこ類に存在する「β-グルカン」、乳酸菌に存在する「ペプチドグリカン」、グラム陰性細菌に存在する「LPS(リポポリサッカライド)」です。

β-グルカンとペプチドグリカンはTLR-2、LPSはTLR-4に結びついて、マクロファージに信号を送ります。

その信号量に注目する必要がありまして、驚くことに前者が1としたら、後者はその1000倍です。つまりLPSを摂取する方が効率良くマクロファージを活性化させることができるということです。

さらにもう一つ注目する点が、前者と後者のキャッチミットが異なるということです。前者と後者をそれぞれ単体で摂った場合と一緒に摂った場合とでは、一緒に摂った場合の方がよりマクロファージを活性化させることもわかています。つまり相乗効果があるということです。

これらのことから、常に自然免疫機能を正常に維持しておくには、きのこ類、乳酸菌類、LPS含有食材を日頃から食事や健康食品で摂取しておくことが重要となってきます。


LPSを含む食材とは


まず、LPSとはリポポリサッカライドの略で、糖脂質を意味します。グラム陰性細菌の細胞壁の一番外側に存在しています。

LPSを含むグラム陰性細菌は、多くの植物に共生しており、それに由来するLPSが植物に付着しています。例えば、私たちが日常的に摂取している穀類、野菜、根菜類、海藻類、漢方薬などです。具体的には、玄米、蕎麦、明日葉、椎茸、蓮根、メカブ、ワカメ、漢防巳、葛根などで、精製されていないもの、土壌中やその近くで育つ植物です。さらに有機の農地にはグラム陰性細菌が多く存在しているとも言われています。

若くても風邪をひきやすかったり、お年を召されていても病気なく元気でいらっしゃったりするのは、日々の食事内容の影響によるマクロファージの状態に起因するのかもしれません。


免疫活性物質を摂るということとは


このようにβ-グルカン、ペプチドグリカン、LPSといった免疫活性物質を摂るということは、マクロファージを活性化しやすい状態にする(臨戦態勢状態に維持する)ことであり、このことによって感染症予防、病気予防につながり、健康維持することが期待できるということです。

ただし、これらは薬ではありません。普段の生活習慣が大事です。食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを取ってください。健康食品は「補助食品」です。普段の食事では足りない部分を補う食品ということをお忘れなくお願いいたします。


参考:自然免疫応用技研株式会社技術資料